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幼い頃の思い出(7)  -命拾い-   

近くの土手には水門がありました。
今では干上がっているそうですが、水門までのどぶ川には船も何艘か浮かんでいました。

ある日の昼下がり、チエちゃんの家に遊びに行くと
「まだ、幼稚園から帰ってきてないのよ~」と言われました。
わたしは幼稚園には通っていなかったのです。
せっかく遊ぼうと思ったのに、当てが外れてしまいました。
「チェッ!チェッ!」って、川の淵を石ころけっ飛ばしながら歩いていました。
・・・と・・・ 急に身体がフワッと宙に浮いたんです。。。。。

「し、しまった…」
「こんな川っぷちを歩くんじゃなかった…」
「砂利蹴っ飛ばしてて川に落ちたなんて、みっともないなぁ…」
「なんで今日に限ってチエちゃんいなかったんだろ…」
「死んじゃうのかな…?」
「死んだらどうなるのかな…?」
「水冷たいよな…?」
「わ~!ここの水汚いよな…」
「誰も気がつかないかな…?」
「母ちゃん心配するだろな…」
「空が青いなぁ…」


ほんの一瞬のことなのに… けっこういろんなことを考えるものなんですね。。。


偶然近くに居合わせた、砂を運ぶ小船に乗った近所のおっちゃんが、
わたしが川に落ちていく瞬間を目撃したんだそうです。

人は水に落ちると、いったん身体が沈むんですって。。。
そして、もう一度浮いてきたところを引っつかんでくれたんですって。。。

今、わたしの命があるのは、その人のおかげなんです。。。
それなのに… 命の恩人の顔は覚えていないんです。。。。。

覚えているのは、身体が宙を舞った瞬間までなんです。。。。。。。。。

その後のことは記憶にありません。。。。。

かすかに覚えているのは… 薄暗い診療所の待合室と、消毒液の臭いだけ・・・



「おまえの色が黒いのは、その時に染まったからなんだよ」と母に」言われ、
それを信じていた純真な女の子だったんです・・・・・???

by sachiconeco | 2005-10-15 18:22 | 昔々のお話

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